ーー「それでさあ、聞いてよ百合ちゃん」

ーーあぁ、うざい。それにいちいち手を握って来るのも気持ち悪い。私に触らないでよなんて言いたいけど仕事だからと笑みを作り耐える。

「どうしたんですか?弘治さん」

彼は私を毎回指名してくる60代のじじい。

ーーそう、ここは水商売。いわゆるキャバクラで私はこのお店のNO.1のキャバ嬢。

仮名ーー百合【ゆり】

キャバ嬢を初めてもう3年。この仕事には慣れたし客がどんなことをしたら喜んでくれるのか、私が知りたいことを教えてくれるのかを私はよく知っている。

「妻がな、ブランド物ばかり買ってしまってだな。最近金も裏会社かなんか知らんが借りているらしいんだ。それでだな。その金額がーー」

「奥さん借金しているんですか?ふふっ、それはきっと弘治さんがこんなところに毎日のように通って私に会いに来ているから寂しいんじゃないんですか?」

「そうかあ...っでもなあ、もし通わなくなってしまったら今度は百合ちゃんが俺に嫉妬して悲しむだろう?それは俺嫌なんだよなあ」

ーーはぁ。自惚れもいい加減にしてほしい。私はあんたみたいなアホジジイに嫉妬なんか少なくともする気ないし悲しむなんてこともありえない。ううん、むしろ私にとっては嬉しいのに

毎日、毎日無駄なスキンシップしてくる奴が消えてくれて。