記憶(仮)

鈴華Side
「しばらく時間がかかるみたいね…何してようか」

『なんで時間がかかるってわかるんですか?』

「”しばらく待っていてください”じゃなくて、”待っていてください”って言ったからよ。確かあったはずだけどどこにあるかまで覚えていないだろうし。」

『その辞典の中から呼び名決めるんですか?』

「ちょっと違うかな。その辞典に乗ってる名前を一通り読んでいくから、聞き覚えのある名前にしようかなーって」

『めっちゃ時間かかりません?俺、字ぐらい読めますよ?』

「人の脳ってね音とかからでも記憶が戻る場合もあるの。読むよりは、だから少しでも記憶が戻るかな~って…………なんで泣いてるの?」

『…あれ…?なんでだろ……わからないけど……なんか懐かしい…な…。』

「あなたには仲のいい人がいたみたいね。どう?顔とかなんか覚えてない?」

『…霧がかかってるみたいにもやもやしていて…わかりません…でもすごく仲良かった気がします。』

「ほかに何か思い出したことある?」

『鈴華さんに会う前なんですけど、おれなんか能力使えた気がするんです。でもどんな能力なんかまったくわからないんですけど…鈴華さんって何か能力使えたりするんですか?』

「もちろん。この世界はみんな能力が使えるわ。でもみんな能力をあまり使わない…というか日常的に使ってるから、”能力つかう!”って感じじゃないのよ」

『そうなんだ…ところで鈴華さんの能力は何ですか?』

「…私の家族はみんな医者になってるのよ。でも私は落ちこぼれでさ…あ、こんな話はいらないわね。さっきはなした通り、医者になってる家系だからそういう能力なんだよね。みんなは直したりすることができる能力なんだけど、私は何の病気やケガが分かる能力なの。みんなはそういうのわからなくても直せるからね。」

『俺医学とか、まったくわからんけど何の怪我とか病気が分かるのもすごいんじゃないのか?だって、そういうの記録してしてけば、流行の病気とかわかるんじゃないのか?今年はこんな病気がはやってるから気を付けましょうとかさ』

「意味ないのよ…そんなことやっても…」

『やってみないとわからないんじゃん!!』
「わかるのよ!!!!……私もそう思ってやってみたわ!!でも…でもみんな…”その病気に罹ってもあなたたちが直してくれるんでしょ?”って言うし、家族からは”金儲けができなくなるから止めろ”って言う!!……………なら私はなにをすればいいのよ!!知ったようなこと言わないでよ!!」

気が付いたら彼をカツアゲしていた。
…っは!!

「ご…ごめんなさい…」
怪我人に何してるんだろ…

『こっちもごめん。確かに詳しく知らないのに言い過ぎたね。お互い様ってことで』

彼はそう言うもののお互い様ではない…明らかに私の方が悪い…彼の考えを否定し、罵声を浴びせ、それにカツアゲまでしてしまった。

『あのさ…敬語使わなくてもいい?こっちのほうが話しやすいから』

「え、ええいいよ。」

「お待たせしました。探すのに時間がかかってしまってすみません…」

「ありがとう、柚葉。」

『柚葉さんお疲れ様。』

「そういえばお二人とも、大きな声で話していましたけど、どうさかしましたか?」

『ま、なんでもないですよ』