教室に入ると、菜奈がいきなり腕を引っ張ってきた。
え?どうしたんだろ?
「な、菜奈?どうしたの?」
聞いても喋ってくれない。
菜奈が止まるのを待つか…と思った時、廊下で女子達の話し声が聞こえた。
『ねーねー知ってる?亜樹くん、富永羽音と付き合い始めたんだって!』
『あ!それ知ってる!こないだの土曜日デートしてたんだって!』
こないだの土曜日……?
ははっそういうことか。
菜奈が私を教室から出そうとしたのはこの話を私に聞かせないためだろう。
「菜奈。もういいよ。ありがと。」
「夢羽っ……」
手を話してくれた時はもう誰もいない屋上に着いていた。
「そんな顔しないで?菜奈。私、もう別れるって決めたんだから。」
もう決めたんだ。だから悲しくなんかない。