片想い


「で、どうだったの?!」
「どーだったって?」
「新しい住まいのことよ!」
「ルームシェアのことより滝澤先輩のことが聞きたいんでしょ?」
「え?いや?、、うん」
「優しいよ。あの後片付け手伝ってくれたり、今日の朝は朝ごはんも作ってくれたし」
「やっぱ想像通りだわー!あーもー!私も一緒に住みたい!!」
「なら早く卒業するんだな」
「拓人は黙って」
「なんであの人にそんな執着するんだよ、ただの先輩だろ」
「違うの!私にとってはヒーローなの!」
「ヒーロー?」
「そう!入学式の時、先輩たちに絡まれてるところを先輩が助けてくれたの。ほんとかっこよかった!」
「そんなことかよ」
「私にとっては衝撃的なことだったの!恐怖の瞬間から救い出してくれた、まさに私のヒーローなの」
「そうだったんだ」
「そう!だから菜々美!これからはレポよろしくね❤︎」
「う、うん」
「、、、」
「じゃあ私レポート出しに行ってくる」
「いってらっしゃーい」
「、、、」
「、、拓人くんってわかりやすい」
「え?」
「嫉妬心ダダ漏れ」
「え、いや」
「好きなら好きって伝えればいいのに」
「あの状態で伝えたら断られるどころか、今みたいに一緒になんて居られなくなる。あいつ、一途だからさ、これって思ったらそれしか見えなくなるんだ。いいんだよ、このままで、、」
「、、でも好きな人の近くにいられて、好きって伝えるチャンスがあるって羨ましいな」
「まだ見つからないの?」
「うん。ここにいたっていうのはわかってるんだけど、そのあと何をしてるのかは分からなくて」
「すごいよな、会えない相手を6年近く想っていられるなんて」
「私にとってもヒーローなのかもしれない」
「え?」
「入りたかった高校に合格させてくれた笑」
「だな笑」
「それに、私に恋を教えてくれた」
「、、、」
「だから栞里が言うこともわからなくもないんだよね。でも私は拓人くんのことも応援してるから」
「ありがとな。俺も水瀬の恋、応援してる」
「ありがとう」



「うんま!!」
「今まで食べたカレーの中で一番かも!」
「ななみちゃん、料理上手いのね」
「一人暮らし長いんで。喜んでもらえてよかったです」
「私ももー少し料理が上手くなればなぁ」
「この前の卵スープなんてあっまあまだったからな」
「それはただ単に砂糖と塩を間違えただけ!てか、あんまり言わないでよ!」
「(微笑む)」
「ただいま」
「あ、奏太、おかえり」
「ただいま」
「今日は菜々美がカレー作ってくれたんだよ」
「今日から夕飯当番だから。口に合うかはわからないけど」
「、、、」
「何黙ってんのよ。ほら」
「、、うまい」
「でしょー!やっぱ菜々美才能あるよね!」
「お前は才能なさすぎるんだよ」
「はー!?ほんと黙って?!」
「ふふ」
「、、、」


一週間 バイト先
「おはようございます」
「あ、菜々美ちゃんおはよう」
「桜さん、おはようございます」
「やっと本物のバイトが来たか」
「この前はごめん。栞里が勝手にまた頼みにきたみたいで」
「あの子の恋はほんとに本気みたいね。あんなに真っ直ぐに相手を想うなんて、見てて微笑ましい」
「ただ単に盲目なだけだろ。まぁ、拓人も何回も来てるから助かったけど」
「以後気をつけます」
「そんなことより、新しい住まいはどーなの?ルームシェアなんでしょ?」
「そうなんです。みんないい人ばっかりで、ほんとに楽しいです」
「よかったね」
「あ、さくら、ストロー切れたから買ってきて」
「はーい」
ガチャ
「で、どーなんだよ」
「なにが?」
「何がって、先生だよ。もう大学入って2年だろ」
「私だって知りたいよ、今どこで何してるのか」
「教授とかが知ってるんじゃねーの?」
「教育学部の教授に聞いたけどさっぱり」
「そんなもんかねー」
「同じ大学に行けば何かわかると思ったのに」
「、、、」
「もう、、やめた方がいいのかな?」
「、、、」
「6年前、先生がいなくなったあの時、先生のこと諦めてたら、こんな思いせずに済んだのに」
「お前はそれでいいのか?」
「え?」
「たしかにこの6年間、辛い思いをしたかもしれない。けど、その想いは無駄だったのか?」
「、、、」
「先生のことを思ってたからこそ、今のななみがいるんじゃないのか?」
「それは、、、」
「ずっとななみをみてきたからこそ、諦める必要はないと思うし、俺は無駄じゃないと思うけどな」
「弦」
「好きならとことん好きでいいんじゃねーの?しおりちゃんみたいに」
「ありがとう弦。なんか元気出た」
「おう」
「ただいまー。あれ?なんの話ししてたの?」
「なんでもねーよ」
「え、私無しでずるーい」
「さくらさんかわいいなーって話をしてたんです」
「あ!ななみちゃん嘘ついた!!」
「(みんな笑う)」


1ヶ月後 家

「ただいまー」
「あ、千夏おかえり」
「おかえりなさい」
「あれ?男子は?」
「みんなバイトみたい」
「なんか女子だけって新鮮♫」
「ななみちゃんが来てから女子だけって初めてだもんね」
「男子がいると暑苦しくて今日は清々しいわぁ。とくに修斗がいるとムカつくし」
「ほんと修斗くんと千夏って仲良いよね」
「やめてよ!あんなやつ、仲良いとかじゃないから!」
「(里香、菜々美笑う)」
「そんなことより、せっかく女子だけなんだし恋バナしません?」
「そうね。菜々美ちゃんは好きな人とかいるの?」
「私もそれすっごく気になってた!どーなの?!」
(奏太帰ってくる)
「?」
「私は、、、一応います」
「マジかー!だよねー!え?だれだれ??」
「先生」
「?!」
「先生?!まさか禁断の?!」
「学校の先生じゃなくて、中学の時の家庭教師の先生」
「、、、」
「もしかして、中学生の時から好きってこと?!」
「うん」
「中学生って、、6年ぐらい前よね?」
「はい。ずっと忘れられなくて気づいたら6年経ってました」
「めちゃめちゃ大恋愛じゃん!告白したの?!」
「想いを伝える前にいなくなっちゃって」
「、、、」
「え?」
「中学2年生の時、私成績が良くなくて。両親は塾に入れたかったみたいなんだけど私塾に行くのが嫌で。そんな時家庭教師を雇って来てくれたのが先生で。最初は嫌々やってたんだけど、先生とやっている間に勉強が楽しくなってきて。それと同時に先生のこと好きになってた」
「なんか、少女マンガみたいだね」
「そうね」
「3年生になっても先生を好きな気持ちは変わらなくて、高校受験に合格したら想いを伝えようって必死に勉強して。それで、高校に合格して想いを伝えに行こうと思ったんだけど、先生は塾をやめててそれから連絡が取れなくなっちゃって」
「、、、」
「そうだったんだ」
「今行ってる大学も先生が通ってた大学で、あそこに行けば何かわかるかもって思ってたんだけど、なかなか」
「もしかしてそのネックレス、その先生からもらったの?」
「あ、、うん。高校に合格できるようにって」
「じゃあそのネックレスがななみの心の支えなんだね」
「そうかも」
「早く見つかるといいね。それで早く想いを伝えないと」
「うん」
「、、、」




「(奏太降りてくる)」
「あ、竹内くんおはよう」
「、おはよう」
「竹内くんも今日2限から?」
「あー、うん。水瀬も?」
「うん。もうすこしゆっくりでもよかったんだけど、なんか目が覚めちゃって。紅茶でいいかな?」
「ありがとう」
「竹内くんって何かに似てる」
「え?、、、」
「、、、あ!子犬だ!」
「え?」
「目がクリクリしてて顔も小さいし子犬っぽい!」
「なんだよそれ笑」
「あ、初めてみた」
「?」
「竹内くんが笑った顔、初めてみた」
「、、なんだよ」
「いつもはなんかムスッとしてるけど、笑った方が絶対いい!」
「、、、」
「笑う門には福来るだよ」
「そーゆー水瀬も子犬っぽいよな。いつもキャンキャン言ってる」
「ん?それって褒めてる?」
「さぁ?」
「ちょっとー!」
「(笑う)」
「(笑う)」

学校

「はぁ」
「しおりどうしたの?」
「朝からずっとこんな調子なんだよ」
「だってさ、そろそろ大学生活2回目の夏を迎えちゃうんだよ?」
「それがどうしたの?」
「大学生活の中で夏を迎えられるのあと3回しかないんだよ?!?!」
「だからなんだよ」
「私は決めたの!来年の夏を迎えるまでに先輩に告白する!」
「いきなりどうしたの?」
「なんかさー、昨日ふと考えちゃって。今は会おうと思えば会える距離に先輩はいるけど、あと2年もしないうちに遠くに行っちゃうんだなーって思って。だから、先輩が近くにいる間に想いを伝えようと思って!」
「まぁ、それもそうだね」
「まぁとりあえず今年の夏は全力でアタックする!」
「空回りしないといいけどな」
「それどうゆう意味よ」
「中学生の時だってそうだっただろ。好きなやつに猛アタックしてたら引かれて大泣きしてたじゃんか」
「あれはまだ子供だったの!今はもうちゃんと考えて出来ます!」
「どーだか」
「拓人くん」
「ていうか、拓人に言われたくないんですけど!ろくに恋愛もしたことないくせに!」
「お前に何がわかるんだよ、俺だって好きなやつぐらい」
「じゃあ誰よ!」
「それは、」
「拓人っていつもそう!人のこといつもそうやって説教しといて自分には甘い。一緒にいるとイライラする!」
「しおり」
「俺だってお前といるとイライラするよ」
「あーそー、わかった。もういい。拓人とはもう絶交する。幼馴染でもなんでもない(去る)」
「栞里!拓人くん追いかけないと」
「いいよ、あんなやつ」
「拓人くん、、」
「、、、」

1ヶ月後 学校
「、、、あ、拓人くん」
「水瀬、おはよう」
「おはよう」
「、、あいつは?」
「今日はバイト入れたから学校休むって。最近バイトばっかりで学校休みがちで」
「そっか、」
「このままでいいの?もうあれから1ヶ月ぐらい経つし」
「ここで俺が折れても元に戻れる気がしない」
「でも、」
「ごめんな、水瀬にも迷惑かけて」
「私はそんな。ただ、2人がこのままなのはいや」
「、、ごめん、俺レポート出しに行かなきゃだから。じゃあな」
「拓人くん、、」



「はぁ、、、」
「最近ため息ばっかだな」
「竹内くん」
「なんかあった?」
「栞里と拓人くんが絶交状態で」
「絶交?」
「あることで喧嘩しちゃって。いつもはケンカしても次の日には仲直りしてるのに、今回は修復不可能で。もうどうしたらいいのかわからなくて、」
「何があったかわからないけど、2人を元に戻せるのは水瀬だけなんじゃないか?」
「え?」
「水瀬が引っ越してきた日、3人をみてこの3人はすごい絆で結ばれてるだなーって思った。だから絆が切れそうな2人を繋げるのは水瀬だけなんじゃないか?」
「竹内くん」
「あ、ごめん、偉そうなこと」
「ううん、そうだよね、私しかいないんだよね。ありがとう、聞いてくれて。なんか、チカラになる」
「おう」
「、、あれ?里香先輩と滝沢先輩?」
「あ、ほんとだ」
「あの2人、仲良いんだね。あんなに楽しそうに話してるの初めて見た」
「なんか高校から一緒だって言ってた気がする」
「そーなんだ。、、、あ!」
「なんだよ?!」
「いいこと思いついた!」
「え?」
「2人を元に戻す方法」
「?」