「今日の朝食は、フランスから取り寄せた高級のサンドウィッチでございます」
お金持ちの家ならお決まりだろう、広すぎる食事用テーブル。そして外国から取り寄せる高級のパンが出せれた。
テーブルの端と端で向かい合わせに座っている父と私。そしていつものように父専用の執事がカバンを持って呼びにやってくる。父とは朝ごはんを食べるときもなにも話さない。なんでかって?それは別に話す内容がないから。最近は起きてもおはようすらお互い交わさない。
「旦那様、そろそろお時間です」
「今日は相手の企業と大事な打ち合わせがあるから帰りが遅くなるよ」
「かしこまりました。先までお送りいたします」
父は日本の8割を占める社長であるだけ、朝から早く仕事に行く。最後まで朝ごはんも一緒に食べられない。
途中から1人になってしまう孤独感。これはきっと、いつになっても変わることはないだろう。
「お嬢様も、そろそろお時間ですよ」
後ろから優しく声をかけてくれたのは、お母さんがいなくなってからずっと世話をしてもらっている執事の花野井(はなのい)さん。
「今日は6限授業だから帰りは5時になるよ」
「かしこまりました。お気をつけていってらっしゃいませ」
優しい花野井さんに見送られながら、私も家も出た。