世の中のお嬢様のイメージはきっと、生まれたときから好きなものを与えられ、好きなものを食べ、幸せだけを見て育ってきた人達のことを言うのだと思う。


だけど私は、世界のお嬢様がみんな幸せを見て育ってくることはないと思っている。


なぜなら、私は小さい頃にかけがえのない幸せを失っているからだ。


2002年5月10日。日本企業の約8割を占める大島財閥の社長である父と、専業主婦として家の管理をする母との間に私は生まれた。


私が生まれてからも父は仕事でいつも忙しそうだった。けれど、母はいつでも私の側にいてくれて、一人娘の私を大事に育ててくれた。幸せをたくさん実らせてほしいと言う願いから"みのり"と名付けたらしい。


いつも優しい母が大好きで、私はいつも母と一緒にいた。


それなのに、私がまだ幼稚園に通っていたときに母は亡くなってしまったのだ。


母がいなくなって以来、私は心を閉ざすようになった。


いつも1人で夜になると母を思い出して泣いてしまう。ずっと側にいた分、悲しみの代償は大きかった。父は世界でも多く活躍する大島企業の社長であることから家にいることはほとんどなく、私はずっと孤独だった。


そんな私を見ていた執事の花野井 秀一(はなのい しゅういち)さんは、私が寂しい思いをしていると父に報告し、それを知った父は私に寂しい思いをさせないようにと、いろんなものを買ってくれたり、なんでも言うことを聞いてくれた。


そしてそんな生活が続き、はや16年の月日が流れた。


今まで小学校や中学校では、世間でも有名ないわゆるお嬢様学校と言われる場所に通っていたが、私はなかなかその雰囲気に馴染めず友達があまりできなかった。


高校に入学する前に父にそのことを話すと、そういうことなら…と普通の高校へ通わせてくれた。


だが、普通高校へ通うのなら絶対守らなければいけない条件があった。


それは、"お嬢様の正体を学校の人達には絶対バラさないこと"


学校では、家柄のことを隠して普通の女子高生として過ごすことだった。