全くもう……と言いながらハンカチで僕の腕を拭ってくれる。



「晴紀は時々そうやってボーッとすることあるけど、何考えてんの?」



哉都は不思議そうに僕を見る。



何を考えてるか?


例えばその艶めく黒髪、



例えば真っ直ぐ僕を捕らえて離さない瞳、



例えばその笑うとできる笑窪、



例えば僕を呼ぶ少し高めのキーの声。



その全てを嫌う方法を、僕はもうずっと考えてる。



考えて、考えて、それでも見つけられなくて……。



「さあ?」



人を好きになるのは簡単で単純なのに、人を嫌うのは何だってこんな厄介なんだろう。


「出たよ、晴紀はいっつもそうやって誤魔化すよな。」
「そうかな?」
「そうだよ。いつも何にも教えてくれないじゃん。」


そうやって拗ねる顔さえ可愛いと思えるんだから、
僕はもう重症だ。


こんなに好きな気持ちを伝えることはできない。


僕は男で君も男で、更に君は僕の事を一番の友だと言う。


それならこんな気持ちは無くしてしまわないといけない。


だから僕は君を嫌う方法をずっと探しているんだ。