そして、この近所に住む人々は、雪に似ていた

年老いて目が薄くなった人

雪のように病や怪我で見えなくなった人


どういうワケか、この近所に集まっている


皆、感覚が研ぎ澄まされていて
私がお裾分けを持っていくと


「一はんの煮物好きなんよ!」



声を掛ける前に、そう言われる


どんなに気配を消そうとしても



「一!ええとこにきた!
ちょっと、頼まれてくれるか!?」



この集落の人々には、適わない…



私が女だということは、もちろん


悩んでいたりすると



「どうした?雪と喧嘩でもしたんか?」




こんなにも見透かされている




「喧嘩なんてしませんよ」




「せやろな」





わかってて聞くんだから…




それも、私が話をしやすいように







「雪の病が、あまり… 良くなくて」




「そのようやな」






皆、わかっていたんだ?


そうか、私よりもよくわかってるよな



明るい雪の本当の心も


きっと、皆には感じられるんだ






「一が気に病むことはない
こういう病なんや…
仕方の無いことや…
それより、一が元気やないことの方が
雪の体に障る
一は、素振りでもしてたらええ」