壱に怒りや悲しみの感情を感じる


だが、殺意が感じられない



私は、あっさりと刀を奪えた

逃げる気配もない




「壱… 壱が殺したいのは、自身?」




私は、刀をおろした


「もしかして… 壱は、人が斬れないの?」



「兄弟喧嘩は、そこまでだ」



土方さんが止めに入る



「江戸で斎藤から聞いた
壱は、一を陥れるために
ひったくりをわざと斬ったそうだ
咎めはなかったが、奉公先をクビになり
実家を出された
会津藩に運良く拾われて、隠れていたら
一の活躍ぶりを聞き嫉妬して、奪いに来た
って、とこだろう?」



「はい…」


「馬鹿だ」



私は、心底呆れた




「馬鹿は、そっちだろ
本当にあんな薬飲んで…
一が、俺を殺しに来ると思ったのに…」


「そんな事、しないだろ…
壱は、私の大切な弟なんだから
弟の為に死ねても、殺したりしない」


「ごめん!一!俺…酷いことした!
本当にごめん!」


「私こそ…自分の事しか考えてなかったから
壱が、そんなに思い詰めていたなんて
気づいてやれなくて、ごめん!」





ずっと一緒だった私達が
離れ離れになったあの日




壱は、人が斬れなくなった

全てを失ったと思っていた私は

新しい仲間と楽しく過ごしていた




壱の事を思うことはあっても
心配はしていなかった



何でも持っていると思っていたから




やはり、私達は似ている



顔だけじゃない


肝心なことを言葉にするのが苦手なとこも