「“ちょっと〜シンデレラ〜!台所のそ〜じは、終わったのぉ?”」

アナスタシアが、笑いながら、言う。

「“は、はい!”」

「“何よこれ!汚いわねぇ、あとから裏の汚い水で洗ってくればぁ?”」

シンデレラの、汚れた手を見て、ドリゼラは、嫌味ったらしく笑った。

「“シンデレラ!次は、馬小屋の掃除!今日は、やることが沢山あるんだから、早くしてちょうだい!”」

トレメイン夫人が、せかせかしながら言う。とても意地悪な顔で。

「“お、お母様!”」

二人の娘は、声を揃え、言う。

「“あなた達は、綺麗なドレスに着替えておかなきゃいけないじゃな〜い♪”」

意地悪な顔から、甘い顔に変わり、甘い声で、二人の娘に言う。


「“はい!今日は、舞踏会ですものね!”」

ドリゼラは、うわの空になりながら言う。










「“ごめんなさい!もう行かなくては!”」


十二時を告げる鐘が鳴り、シンデレラは、慌ててその場を去った。


「“待ってください!”」

王子は、そのあとを追いかける…が、


結局、追いつけなかった。

シンデレラの去った後を見ていると、階段に、


「……これは……?……あ!」






「“ここでもありませんでしたね。”」

大公は、残念そうに言う。


「“そうですねぇ。”」

郵便屋も、そう言う。

その時、トレメイン夫人が、大公によってきて、

大公は、

「“(後で、約束のお金を払ってほしい。)”」

と言う。

その顔は、トレメイン夫人と、同様に、意地悪な顔で笑っていた。


その時、

「“〜♪〜〜♪〜〜〜♪♪〜♪〜〜♪♪〜♪”」


どこからか、歌が聞こえる。

美しい、透き通った声が。

屋敷に、近くの林に、二人の姉に、大臣にも、大公と共にいた、郵便屋にも、兵達も、そして、大公にも。

誰もがその声に虜になる。

聞き惚れる。

トレメイン夫人は、不味そうな顔をする。


「“誰の声でしょうな。”」

郵便屋が聞く。

すると、


「“も、もう、ここには、用は、無い!つ、次へ行くぞ!”」

大公は言う。


「“待て!大公!!”」

兵達の中から声が聞こえる。


その声を上げた兵は、身につけていた装備を取る。


その姿は、

「“お、王子!!”」


「“この声の主を確認してからだ!次の元へ行くのは!ちゃんと、確認するんだ!早くしろ!大公!!!”」


大公は、動かない。

王子は、ひとつため息を吐き、言う。

「“トレメイン夫人…案内してくださいますよね?”」

トレメイン夫人は、案内すると首を縦に振った。

大公は、トレメイン夫人の顔を見た。

その顔は、悔しそうな顔だ。










「“あ、あなたは……”」

シンデレラは、驚く。

「“あぁ、会いたかった。あの夜、あなたが行ってしまってから、僕の心には、穴が空いてしまった。それは、とても辛く、淡かった。そして気づいた、それは、恋なのだと。”」

シンデレラは、驚いて、口をぱくぱくさせる。

「“シンデレラ!僕は、君が好きだ!どうか、結婚してくれ!” 」

シンデレラは、泣く。

シンデレラの、涙を見て、王子は、困った顔をする。

「“だ、大丈夫か?すまなかった。すまないことを言った。僕が君にひどいことを言ったなら、許してくれ。どうか……”」

シンデレラは、俯く、王子を抱き寄せ、

「……王子様。これは、悲しい涙では、ありません。嬉しい涙なのです。私もあなたが好きだから…好きとあなたに言われて、嬉しくて、つい。」

涙を流しながら、シンデレラは、言う。


「“じゃじゃあ、結婚してくれるのですか?”」

王子は、今にも泣きそうな顔をする。

「“はい。もちろんです。”」

そう言われ、王子は、嬉し泣きをする。

その子供のような、泣きっぷりに、シンデレラは、花が咲いたように笑った。


そして、王子と、抱きしめあった。






「はーい。終了!良かったよ。みんな。」

舞台の練習が終わった。

私は、時計を見る。

……3時間もかかるのか…

あぁ。遅鳴かっこよかったなぁ。

演技もうまかったし。

賢い系だから、大臣役にあってるなぁ。


それにしても、愛鳴の演技、気合が入ってたなぁ。

私は、愛鳴に目線をやる。

愛鳴は、秘鳴に呼び止められ、なにか台本について話していた。


そして気づいた。

秘鳴と話している、愛鳴の耳だけが、赤く染まっていた


耳だけだから、誰も気づいていない。

私は、察した。











愛鳴は、秘鳴が、「好き」なんだなぁ。


だから、演技に気合が入っていた。


いや、気合いじゃなくて、本音だろうな。


そして、多分とーなは、それを知っていて、愛鳴を、王子様に推薦した。


兄妹愛か………

何となく、可哀想だなぁ。