『…ねぇ、』



そんな声がした気がした。



『…聞こえてねーの?』



幻聴?私にそんな疾患はないはず。

じゃあ誰かいる?振り向かないことも出来るけど、もし誰かいるとしたらどうせまた声を掛けられるだろう。



心の準備を整える時間は少し欲しいし、まぁ軽く相手をするのが妥当だと思った。




確認のために左を向くと、10メートル程先に、人が見えた。




本当に、誰かいた。




『聞こえてんじゃん』



制服の白いシャツを着た、黒髪の男の子。


高校生っぽいから、だいたい同い年だと思う。




「…なんですか?」



『別にー』



へへっと、悪戯っぽく笑った。



可愛い顔だな、と思った。

クラスに馴染んだことのない私でもわかる。


きっとその笑い方で場を盛り上げられて、

すぐに誰とでも仲良くなれて、

友達作りに苦労なんかしたことがないって顔だ。