「皆野さん……」

どうして彼女が……?

私の頭はそれでいっぱいだった。

彼女はみずきと同じいじめっ子グループ。

多分、私をいじめる中で一番私を嫌ってる。

他にも二人いるけど、彼女たちはただただ楽しんでいるか、みずきと皆野さんに逆らえないのか、という感じだ。自分からはそんなに酷いことはしない。

普通に、「うんうん」と便乗するだけ。

それでも皆野さんは。あの人は……。

三人がいないときも私の所に来ては通りすがりに死ね、と言ってくるような人。

怖くて、恐ろしい。そんな存在。

「どうして、ここにいるの……」

そういうと、皆野さんはキッと私の方を睨む。

「は? 死んだとでも思ってんの?」

そういうと、嘲笑うかのように皆野さんはにやける。

私に向かって、ずかずかと歩き出す。

そのままぶつかりそうな勢いでやってきて、ぎりぎりのところで止まると、私の胸倉を──いや、首元をしっかりとつかみ取り、力を込めた。

思わず咳込もうとするが、喉がつっかえてえずくような形となった。

「お前の……せいだ!! お前が弱いから!! 死ね、死ね!!」

言っている意味がよくわからない。私は悪くない。

こんなところまで私は八つ当たりされなければいけないの……?

横を見やる。みのりと正木が何か言おうとしている。

助けを求めようと、口をぱくぱくと動かす。声が出ない。

息が苦しい。

ここで死ぬの? 私に残された未来は、やっぱり絶望しか残ってないの?

私は、走馬灯ではなく、みずきの顔を思い出す。

彼女は……私と仲良くしてくれた。一瞬の間だったけれど、それはとても温かいものだった。

私には、絶望だけしか残っていない訳じゃない。

しっかりしろ、あやか!!

皆野さんを足で突き飛ばす。ほぼ蹴り飛ばしたといってもいいくらい。怯んだのか、彼女は慌ててぱっと手を離した。

私は精一杯力を振り絞り、声を出す。

「やめろッ!! 人をいじめるのがそんなに楽しいの!? 今はそんな状況じゃない、助け合わなきゃ!!」