「それにしても、喉乾いたな……」

正木は、喉の辺りを扇ぐような仕草をして言った。

確かに、今、鬼に見つかって逃げたりでもしたら喉から血が噴き出しそうなくらいカラカラだった。

お金はほとんど置いてきてしまった。今、ポケットには少しだけ……五百円ほど入っているが、そもそもここでお金が使えるのかすら分からない。

「さっきから気になってたんだけどさ」

みのりがちょこんと通りの端っこを指差して言う。

「ああ、あれな。罠かと思ってるんだけど」

二人の話に追い付いていけない。私はあまり目が良くないから、何も見えない。慌てて「何それ!?」と叫ぶ。

「え? 見えないの? ほら、箱があるじゃん」

みのりに今まで何度も「眼鏡にしようかな?」とか「全然見えない」とか散々言ってきたから、てっきり私が目悪いの理解しているのかと思っていた。すっかり忘れ去られている。

でも、それは置いておくことにした。