against

ぼーっと、瞬きする事さえ忘れて。

今日一日あった全ての事を忘れられる。忘れられるけれど。

今日は少し時間がかかるみたい。

「……俺帰るよ? お前は?」

止まったままの私の時間を少し動かす声がする。

「まだいる」

まだ明日への力が湧かない。

男が立ち上がった事が右の目の隅の方に映る。

「ごゆっくり〜」なんて言いながらゆっくり歩き出したと思うとすぐに立ち止まった。

右にあった声が真後ろに移る。

「明日もくんの?」

やけに質問の多い奴だなと思ったけれど、星空と月明かりが、まぁいっかなんて気持ちにさせる。

「わかんない」

その答えを聞いて、男は草よりも土の多い道をジャリジャリと音をさせて帰っていった。