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「ほんとお前って意味不明」

ほらっ。こうやって君は笑うから。

「いいじゃん、つか何でいるの?」

膝の上にあった鞄を右側にドンと置いて、背もたれに頭を乗せる。

ねっころがって空を眺めている気分だ。

「お前と同じ理由じゃね?」

そんな訳なくても、そうだといいけれど。

じゃないと賭けに負けてしまう。

「男のあんたには私が来る理由なんてわかんないよ」

冷たく聞こえるその言葉を、精一杯明るく、温かく言ってみた。

何故、君にこんな事をいうのかはわからない。

名前も知らない君に。

でも少しだけわかる事がある。

私がここに来ることを、君がここに居たことを、お互い誰にも話さずに、またこうしてこの場所はここにある。

それだけで、賭けた意味はあったのかもしれない。

「何それ、変な奴だな」

君はまた小さく笑いながら、私と同じように空を見上げた。