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電車を降りると、そんな小さな事どうでもよくなった。

考えるならまた明日。電車に乗ってからでいい。

鞄の大半を締める『分厚い雑誌』の底を手で探った。

奥にいきすぎてしまった腕時計を探し当て、腕に巻こうとするも、どうにも重たい鞄が邪魔して上手く付けられない。

仕方なく、スカートのポケットにそれを入れていつもの道に入る。

今日はまだ明るい。

コンクリートの湿り具合と、歩くたびにはねる水が気になるが、石の階段を上がる事にした。

雨はいつまで降っていたんだろう。

しっとり濡れた石をジャリッと音をさせながら踏んでいく。

桜の木の若葉から、ポツッと頭に雨水があたり、静かな辺りのせいか、その度にドキッとする。

私が通る場所にしかない桜の木。何だかそれが人工的に見えて、登る速度が遅くなった。

それでも山全体になくてよかったな。

花見客なんて居たら嫌だし。

その花見を過ぎた花びらは、さっきまで降っていた雨のせいか、石の上をじゅうたんの様に覆っていた。