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落ちていくオレンジはあの日見た景色に似ていた。

この美しさに俊也も自然に涙が出てしまっていたのだろうか。


「部室……」

どれくらい沈黙していただろう。静かに流れる空気の中、微かに震える俊也の声がした。

「部室使ってる?」

「え?あの時一回入ったっきり……」

「あ、そうだ」と、言いながら鞄から部室の鍵を取りだし握る。

「鍵、返そうと思って」

そう言って鍵を手渡そうと思ったのに、俊也は顔も見ずに「いいよ、お前にやる」なんて言った。

「え、でも……」

「もう必要ねぇし」

そう言われてしまい出しかけた手を引っ込める。

バスケ部に何かあるって思ってから会うこともなく、聞くことも出来なかったけれど、いざ、聞けるようになってもなかなか思うように言葉が出ない。

手に握られた鍵を弄りながら次の言葉を探していると、俊也は夕日に向かってこう告げた。


「バスケ部、廃部になったから」