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「――ここなんかお前にピッタリ」

そう言って開けた扉は棚と棚の間にあって普通は扉があることすらわからない、ましてや誰も開けようなんて思わない扉だった。

俊也はその扉を慣れた手つきで音を立てずにそっと開ける。

思わず「おっ」と声が出そうになったのを俊也が目や口、顔全部で静かにしろという素振りをするから出そうになった言葉を飲み込んだ。

一歩中に入ると壁と本棚に挟まれ扉の幅しかないスペースが続いていた。

部屋の中は静かで、本の隙間から様子を伺うとまた本棚が並んでいるのが見えた。その奥に少しの生徒らしき姿も見える。

なるほど図書室か。

図書室にも向かおうと思った日もあった。でも誰が利用してもいい図書室にも利用出来ない人間もいるわけで、私はどちらかと言えばそちら側の人間だった。

今の立場は何もコソコソすることもないけれど、やっぱり人に見られるのが嫌でそんな自分と葛藤しては毎日校舎の裏に足が向いていたのだ。

分厚く重たそうな誰が読むのかわからないような本が並ぶその場所はなかなか居心地がよかった。

俊也はあの場所へもこんな思いで来ていたのだろうか。

ふと、そんな事が頭を過ったけれど、俊也の「次」という私にしか聞こえないであろう小さな声でその場を後にした。