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口に押し付けられていた手を握ると俊也は慌てて手を離すと同時に一歩下がった。

「殺す気かっ」

ドキドキドキと音が鳴りそうなほど動く胸の奥の方がぎゅーっと痛くて、本当に死んでしまうんではないだろうか。

自由に酸素が吸えるのにまだ息苦しくて。

「あ、いや、ごめん」

謝られると余計苦しくなる。

「ん、うん」

普通に謝られたものだから、コクリと頷くのが精一杯でさっきまでの勢いを忘れしまっていた。それでも「ありがとう」何て可愛らしく言えるはずもなく、憎まれ口も出てこずで困った沈黙が続く。

胸がいっぱいって言うのはきっとこんな感じで、何でいっぱいになるのか何てわからないけれど、今の私はいっぱいなんだと思う。

わからないように鼻からゆっくり息を吸って心臓のリズムを変えてみるけれど、意識すればするほどとんでもなく速く動いてしまう。

「あ、えっと……」そう言って俊也は言葉を探しているようだった。

「あ、そうだ!」

やっと見つかった言葉を嬉しそうに並べる。

額の汗を手で簡単に拭うと外していた目線を私に向けホッとしたような表情をした。

その顔があまりにもユルかったからか、いっぱいになっていた胸から自然に痛みが取れてくのがわかった。