ももかとは夏休みに恋愛相談も兼ねて遊ぶ約束をした。

高一の時は誰とも遊ばず退屈だったし、高三になると勉強に集中するから、今遊ぶのがちょうどいいか。

そう言えば長谷部は夏休み何するのかな。

私は最近、長谷部のことをよく気にしていた。友達としてだと思うけど、なんか変な感じがする。

去年告白された時は何とも思わなかったのに、今はちょっとしたことでも気になってしまう。

これはももかのことを思ってやってることだ。と自分に言い聞かせるたびに、胸がいたくなるのはなぜ?もしかして恋してるの?
私に限ってそれはないと思うけど。

終業のチャイムが鳴り、気づいた時にはみんな教室を出ていた。

私、授業一時間分ぼーっとしてたのか。
開けたノートは見たら真っ白だった。

ももかに「またね」と言ったのは覚えているものの、それ以外は何も覚えていない。

キーンコーンカーンコーン

この学校では放課後が始まって三十分後にチャイムが鳴る。

先生たちの会議が始まる合図や部活の開始時間と言った噂がある。私もこのチャイムが鳴る理由はわからない。

「最近授業に集中してねーよな」

ガタン!

いきなり声をかけられ椅子から立ち上がった。
声がした入口を見ると

「なんだ長谷部か」

先生かと思って焦った。
それより、まだいたんだ。

確かに最近は授業中ぼーっとしていることが多い。

その時私はあることに気づいてしまった。

他のクラスメイトと話す時は敬語で、単調だし、ももかにも素の自分は見せていない。

でも今、長谷部の前では完全に素だった。

周りから見てもわからないほどの違いだったけど、私には分かる。

「俺がいることにそんな驚くか?」

いや、そういうわけじゃ

「ちょっと考えごとしてて」

なんかさっきから心臓うるさいし、体温も上がってきてる気がする。これはホントに…

「そう言えば片山って、夏休み予定ある?」

「へ?」

突然の質問に驚き、声が裏返ってしまった。

夏休みは数日ももかと会う以外今のところ予定はない。

「基本暇だけど」

今は長谷部に緊張が伝わらないように話すことで必死。

それなのに

「そうか。よかったらさ、買い物に付き合ってくんね?」

はぁ!?

何を言い出すんだこいつは!驚きの表情を隠せないでいると

「お前ってほんとわかりやすいよな」

そう言って長谷部は笑った。

からかってるの?と言いたかったけどお喋りな心は声にならなかった。

買い物というのは、二つ年上のお姉さんの誕生日プレゼントを一緒に選んでほしいとのこと。緊張してパニック状態だった私は、断る理由が見当たらなかったのでオーケーと返事をした。

もちろん、友達として。