梅雨が終わり、もうすぐ高校に入って二回目の夏休み。予定を立てる会話で教室は騒がしかった。

「そろそろ長谷部くんと話してみようかな。」

「おぉ、ついに?」

一人の男子の話題でここまで盛り上がったのは人生で初めてだ。
女子なら当たり前なんだろうけど、恋愛に興味がない私からしたら珍しいことだ。

恋バナがこんなに楽しいものなんだと思えたのはももかのおかげかな。

それに長谷部と話している時間は退屈だとは思わなかった。

共通の趣味があって、男子で唯一話せる人だった。

「後で連絡先送っとくね」

人間関係が苦手な私は、最初は仲良くなりすぎずほどよい距離で接していこうと思っていたのに、ももかとは自然と友達と呼べる仲になっていた。

よく話してたからかな?

友達を作るのが嫌いなわけではないが、中三の時に人間関係に失敗して、それ以来人と関わるのを避けていた。

なんでも言い合える仲も大事だが、思ったこと全てを口に出し、知らぬ間に相手を傷つけてしまったことがきっかけで、後戻りできない状態になった。

高校ではそうならないために、仲良くなりすぎない関係を築いていたけど

「まぁ、これはこれでいいか」

相手も傷つけないように心掛けていれば、中学と同じことにはならないし。

「そう言えば、今みたいな喋り方になったのも中三の心を閉じたときからだったな」

自分の気持ちや考えてることを相手に悟られないようにするためにわざとそうした。