それから私は、どうやって家に帰ったか覚えてない。

覚えているのは
夕日が半分顔を出し、オレンジ色に染まる景色。


自分の部屋に入ると、意味もなく携帯の画面を眺めていた。

「ももか、どうだったんだろ」

結果は電話で報告すると言われていた。

ピコン♪

ライン?
誰だろ。

(成瀬ちゃん、今電話できる?)

ももかだ。

気になる。

でも、知ってしまったら恋が終わる。

三分ほど悩んだ

「もしもし成瀬ちゃん?」

「もしもし」

かけてしまった。

「落ち着かないから連絡した!」

いつも通りの元気なももかの声がした。

あぁ、やっぱり。

「報告します!
私、野崎ももかは長谷部くんに告白した結果」

聞きたくない

聞きたい

まるで花占いのように心で呟いた。

「ふられちゃいました」

「えっ」

今なんて…ふられた?
なのになんでそんなに元気なの?

「やっぱりだめだったー。
他に好きな人がいるんだってさー」

「そ、そうなんだ。
…ねぇ、ふられたのになんで元気なの?」

聞いちゃいけないことかもしれない。

でも、どうしても気になった。

「んー、すごい真剣な顔で言われたからかな?
他に好きな人がいるから、ごめんなって
あの時の長谷部くん見たら、諦めがついたって言うか。
その好きな子に、私は勝てないなって思ったの」

「そっか」

あんなに好きだって言ってたのに、
そんな簡単に諦められるものなのかな。

恋ってそんなものなのかな。

「だから今回は、成瀬ちゃんに譲る!」

「はい?」

今度は何を言い出すのかと思ったら

「え、でも他に好きな人がいるんじゃ無理だよ…」

「大丈夫だよ!成瀬ちゃんなら。
自信もってこ!」

ふられた後で、落ち込んでるはずなのに。

私のこと気遣ってくれてるの?

「ありがとう。
ももかも、無理、しないでよ?」

ももかの気持ちが嬉しすぎて、泣き出してしまった。

「えぇーなんで成瀬ちゃんが泣くの?
そんな、泣かれたら、私まで、グスッ」

ごめんももか。

でもこういう時は、やっぱり泣いた方がいいよ。

私たちはしばらく泣き続けた。


落ち着いてきたころ、ももかが口を開いた。

「よし!じゃあ明日告っちゃお!」

「えぇ!?なんでそうなるの?」

「早い方がいいって!」

いつだって優しく接してくれた。

いつだって背中を押してくれた彼女の言うことを聞かないのは損だ。

そう思った私は

「わかった、明日ね」

結果もちゃんと報告すると約束して
電話をきった。


さて、なんていうかな。

告白の言葉なんて考えたこともなかった。

悩んだ末

「明日思ったことを伝えよう」

今日は泣き疲れたんだ。

明日に備えて寝よう。

ー大丈夫だよ!

ももかが言ってくれた言葉を
何度も頭の中でリピートさせた。