「今日は楽しかったか?
ケーキ来てからは相変わらずぼーっとしてたけど」

帰り際そんなことを聞いてきた。

心配してくれたのかな。

「そんなことないよ。
楽しかった、ありがとう」

「それならいいけど」

なんか、前出かけた時の帰り道より
二人の間に距離があった気がした。

やっぱりあの態度はだめだよね。
謝ろう。

「じゃあ今度は学校でな」

「うん。ありがとう、またね」

あれ?
謝るんじゃなかったの?

このまま別れたら、学校で気まづくなるじゃん。

そう思ったのに声が出なかった。

いつものお喋りな心はどうしたのよ!

そう叫んでも、声にはならなかった。

あれ以上中学の話をすれば絶対嫌われると思ったから、
掘り返したくなかったんだと思う。

でも、このまま黙っててもだめでしょ!

嫌われたらどうしよう。

その考えで頭はいっぱいだった。

恋をすることの楽しさや辛さを教えてくれた初恋の人を、
どうしても失いたくない。

時間が経つにつれて、後悔が押し寄せる。

私は泣いた。

しばらくの間、誰もいない玄関で。