恋の始まりは、チャイムと同時に

「お前、甘いもの苦手だろ?」

その一言で我に返った。

ももかとはお互い頑張ろうねと話が終わり、今は長谷部と話している。

喫茶店に出かけることが決まり、いろいろ雑談していると、長谷部が突然言い出した。

「あれ?私、甘いもの苦手って教えたっけ?」

お互いの好きなもの、苦手なものの話は確かにした。

でも、甘いものが苦手というのはあえて言わなかった。

甘いものが苦手だと女子っぽくないとからかわれたことがあったから、知られたくなかった。

でもなぜそれを知っている。

「中川紗友莉さんに聞いたんだ。覚えてるだろ?」

なんで紗友莉さんのこと知ってるの?

頭の中はパニック状態。

「俺、中学の時はずっと図書委員だったし、なんせ中川さんと姉ちゃんは仲良かったからな」

どうして今まで気づかなかったんだろう。

いや、気づけるはずがない。

同じ図書委員をしていたのはたったの半年で、しかもその半分は真面目に仕事をしていなかったのだから。

図書室に通うようになったのも、紗友莉さん目当てだったし、他の人のことなんて気にもとめなかった。

「え、でもなんで私の事が話題になるの?」

素直にそう思った私は問い詰めた。

「えっと、それは…」

珍しく動揺している長谷部。

いけないことを聞いてしまったのかと思い、やっぱり何でもないと慌てて伝えた。

「中学の男にも、気になってることくらいあるだろ」

ぼそっと独り言のように呟いた長谷部には問い詰めなかった。

「長谷部は好き嫌いしないでなんでも食べれるの?」

「まぁな。甘いものだって食べれるぞ」

からかうように言った。

そして私は思った。

いろんな長谷部の表情を見ているうちに、いろんな彼に会えた。

最初は静かで落ち着いた大人って感じだったのに、今じゃ時々子どもみたいにからかったり、案外男らしくてかっこいいところもあったりして。

そのたびに、私自身も新しい私に会えた。

学校の真面目な印象とは別に、お喋りになったり、無邪気に笑ったり、自然に会話ができたり、恋したり。

電話で話すと緊張するかと思っていたけど、話しているうちに、どこか懐かしさを覚えて、とても楽しかった。

「じゃあ八月の十六日に迎えにいくから」

「うん、楽しみにしてるね。それじゃ」

喫茶店までは歩いて行ける距離だという。

案内してくれるそうなので、私の家まで迎えに来てくれることに。

電話が終わり、静かになった部屋で私はクッションを抱きしめていた。

出かけるのは学校が始まる一週間前。

夏休みの間、片思いをしてる人に二回も会えるなんて凄くないですか!?

しかも電話で計画立てるって、本物のカップルみたいじゃないですか!?

抱きしめていたクッションを叩きながらはしゃいでいた。

学校での私からは想像できない行動をしていることに恥ずかしさを感じ、涙目になりながら笑った。

「私って、こんな人間だったんだ」

新しい自分に会えたことが嬉しくて、

今日のお出かけが楽しすぎて、

今度会うのが待ち遠しくて、

高校二年の夏休み二日目は浮かれすぎて、

外が明るくなってから眠りについた。