目的地に着いてからはプレゼント用の服や小物を探したり、お昼を食べたり休憩がてらに本屋さんに寄ったりと、まるでデートのようなことをした。

「お姉さんにプレゼントあげるなんて、
できた弟だね」

なんて、からかってもみたりした。

「あげないとずっとねだってくんだよ。
それがいやだから、仕方なくだよ。」

ため息をつきながらも
どこか微笑んでいた。

やっぱり優しい人だな、長谷部って。


それよりも、

私たちって周りからはどう見られてるのかな。
やっぱり付き合ってるように見えるのかな?

そればかりが気になった。

やっぱり私は、長谷部のこと好きなのかな。いやでも、ももかのこと応援するって言ったからな。

二人で並んで歩く時は平然を装っていたけど、心臓はバクバクで、話しかけられた時なんかは完全に目が泳いでいた。

「気に入ってもらえるといいね」
帰り道そう話しかけた。

外に出たのは夕日が半分顔を出し、街全体をオレンジ色に染めるころ。

実際お店見て回っている時の記憶は、緊張しすぎてほとんど覚えていない。

唯一覚えているのは、本屋で見た長谷部の幸せそうな顔。その顔を見て私も幸せな気分になった。

ほんとに本が好きなんだなって思ったし、なんか可愛かった。

せっかくのお出かけだったのに、少ししか思い出せないのはもったいなかったけど。

見たもの、感じたこと全てが新鮮でいい経験ができたと思った。

「そうだな」

最後までクールだな。
緊張とかしないのかな。

いつもと変わらない口調で話す長谷部にちょっと嫉妬した。

「今日はありがとね。楽しかった」

これっきりだと思うと、
少し寂しい気持ちになる。

長谷部は私といて楽しかったのかな?

そう思って顔を覗き込んでみた。

「じゃあまた行くか?」

え?

周りの音が一瞬消える。

さっきまでの私の気持ちに答えるかのように言った。

あまりに唐突で驚きが隠せず
ぽかーんとしていると

「俺も今日楽しかったし、片山が嫌じゃなければと思ったんだけど」

何そのセリフ、マンガみたい。

でも、私と同じ気持ちでいてくれてるんだとわかって嬉しくなった。

「行きたいに決まってんじゃん」

嬉しさのあまり心で叫んだつもりが
いつものように声に出ていた。

「え、マジで?」

学校では真面目で恋愛なんて興味ないですって感じの私が、あんなことを言ったのだ。

引かれたな、絶対。

「嬉しい」

その言葉に驚いた私は、長谷部の方を見る。
普段から感情をあまり顔に出さない長谷部の頬が赤く染まっていた。

照れ隠しなのか、手で口をふさいでいた。

なにそれ可愛い。

今回ばかりはお喋りな心が役に立ったな。

「ふふっ」

この場の雰囲気に耐えられなくって思わず笑ってしまった。

それにつられて長谷部も笑っていた。

その流れか

「今度、喫茶店行かねぇか?」

今日はなんかぐいぐいくるな。

まぁ、嫌いじゃないけど。

「いいよ。夏休みの暇つぶしくらいにはなるかな」

「可愛くねぇな」

「長谷部には言われたくない」

「なんだそれ」

くだらない話をして、私の家まで送ってくれた。

また電話するなんて約束して。

今日は本当に楽しかった。
今までにないくらいドキドキした。

ここまでくると、自分の心はもう騙せない。
ももかにちゃんと話すしかない。

そう決心したのは、長谷部と別れてすぐだった。