朝十時。

薄めのメイクに水色のワンピース

「準備完了っと」

集合時間まで一時間ある。

家にいても退屈なので、早めに家を出た。

時間が早いので人は少ないと思っていた、が
さすが夏休み。

「学生が多すぎる」

こんな早くからどこに行くんだろう。

今まであまり遊びに出掛けたことのない私からしたら、疑問に思う。

友達やカップルでにぎわっている最寄り駅周辺で待つことにした。

あと三十分か、あそこの日陰にいようかな。
しばらくすると

あの子可愛くない?
一人かな?

という男子高校生の会話が聞こえた。

私に対しての言葉じゃないと思っていたのに、その会話の主がこちらに近づいてきた。

三人組。なんかチャラそう…逃げた方がいいかな。

「ねぇ、君一人?よかったら俺らと遊ばね?」

これは…ナンパだ。
なんで早くに気づかないんだ私は!

鈍感な自分に呆れた。

それより早く逃げなきゃ。

…あれ?なんで?足が動かない。

誰か、助けて。って少女マンガじゃあるまいし、自分でどうにかするしか

「俺の連れになんか用?」

え!?

なんだ、彼氏持ちかよ。
そう言って三人は去っていった。

私には彼氏なんていない。
誰が助けてくれたの?

顔を上げてみると

「お前、何ナンパされてんだよ」

「長谷部…」

なにこの少女マンガのような展開は!

少女マンガを詳しくは知らないけど、多分こんな感じなんだろうな。

そこにいたのは、紛れもなく長谷部優斗だった。

「なに突っ立ってんだよ。行くぞ」

そう言って私の手を握り歩き出した。

「助けてくれて、ありがとう」

少し照れくさかったけど、嬉しくなってつい笑顔がこぼれた。

集合時間前なのに来てたんだ。
でも来てくれてよかった。
本当はちょっと怖かったし。

「別に、当たり前のことをしただけじゃん」
なにそれ、可愛くない。

でも、サラッと答える長谷部がかっこよく見えた。

「お前なら、いつもの冷たい目でどうにか出来たんじゃないのか?」

冷たい目!?
そんな風に見られてたの?

「ちょっとそれひどくない?」

からかってるのはわかる、わかってるよ?

「ほんとのことだろ?」

やっぱり可愛くない。