夕方の5時前頃。



「そろそろ帰るね。また明日」



律が立ち上がりそう言うと、寝ていた玲までもが起きて見送る。



「えぇ、また明日」



「バイバイ」



「……ん、バイバイ」



「気を付けて帰りや〜」



「律君!また明日!」



「うん」



幹部室を出て階段を降り、下っ端の居る1階を通る。



「また明日!」

「律さん!気をつけて!」

「さよなら!また明日」

「律さん!」

「律さん」



下っ端全員が邪気の無い笑顔で律を見送るのを見ながら外に出ると、

そこには大きなリムジンが1台。



リムジンに迷いなく乗り込む律の後に続いてリムジンに乗り込むと、

運転席との仕切りが開いた。 



「雪香様、お初にお目に掛かります。私は月詠家専属の運転手の白石と申します。

以後、お見知りおきを」



自己紹介をした白石さんは微笑んでおり、優しいお爺さんという感じだった。



だが、私が返事をするまでもなく仕切りが閉まり同時にリムジンが発車した。



挨拶は不要って事だろうか。



「白石はいつもあんな感じだから気にしなくて大丈夫だよ」



律にニコッと微笑まれ、何がどうしたらそう微笑めるのかを教えて欲しいと思った。



………そんなまま、一方的に話し掛けられ受け答えしてる内に扉が開き、

律は差も当然と降りる。



「付きました」の一言くらいくれたってと思いつつ、

まぁそれくらいの距離感も悪くないかと片付け律に続く。



降ろされたのは、屋敷の敷地内の玄関前だった。



運転席の窓が開き、

微笑んだというか笑顔を作った白石さんが「失礼します」と言って走り去っていく。



玄関を律が開けてすぐ、どうしてか不明だが義父が立っていた。