ハッとした。



随分長く固まっていたらしい。感覚で分かる。



何故呆けていたのか。

何故動けないでいたのか。



分からない。



聞こえてくる悲鳴。

殴る音、蹴る音、その他様々な音。



「何をしてるんだ私は」



急いで扉を開ける。



ーガチャガチャ



鍵だ。

律が出て行った時掛けてたではないか。



っ!



悲鳴が途絶えた。

静かになった。



勝ったか負けたか。



勝敗は分からない。

分からないがとにかく胸騒ぎがする。



蹴破るか。



ーバンッ!!
 


扉を蹴破り階段前の踊り場の様な場所に立つ。



!?



立って、後悔した。

ハッとしたのが遅かった事に。

律の命令や言葉を無視しなかった事に。



「あ〜れ〜?護衛のくせに何やってたのぉ〜?」



「どうせ口だけだろ。なぁ?」



勝ち誇り下卑な笑みを浮かべる亜夢と、黒蛇総長戸賀大我。



その傍らに純平、大輝と並んでいる。



そして、その足元には。



「雪………香、逃げ……て」



「早…っくっ」



傷だらけで倒れる、律と瑠樹。



歩、裕哉、裕翔、哲哉、千景。



周りには倒れる大勢の下っ端。意識はギリギリであるようだ。



ードクンッ



雪路が殴られた時は、怒りで感情が支配された。



「護衛とか言ってたけど、全部終わる直前に来て役立たずだなぁ?ゲヘヘヘヘっ」



「確かに。何必死で階段守ってるかと思ったら、まさか負け犬を守ってたなんて」



「だってお金での付き合いでしょー?」



向けられる嘲笑、憎悪、嫌悪丸出しの視線。



それは、青龍の下っ端からもだ。



罵られる事は多々ある。



だがいつもと違う罵りの言葉だ。