ネムは翌日、母に連れられて心療内科を受診した。

「この子、ずっと家に引きこもって・・・。ご飯もろくに食べずに・・・毎日寝てばっかりで・・・」

診察室では、母が一方的にネムのことを話した。

ネムはどうしたらいいのかわからず、一言も話せなかった。

「もしかして・・・ネムは頭が・・・その、おかしくなって・・・精神病になっちゃったのではないかと・・・」

頭がおかしい・・・?

ネムは母の言葉を聞いてはっとした。

私は頭がおかしいのか。

頭がおかしいから、人生において成功を掴めなかったのか。


「お母さん、とりあえず落ち着いて下さい。まずはご本人としっかり話す必要があります。では、ネムさん、今の症状を把握するために、一度こちらのチェックシートに目を通してみましょうか」

このチェックシートは、待合室にてネムが記入したものだ。

「夜眠れない、食欲がない、気力がわかない、自殺願望があるーこれらに当てはまるということは、ネムさんはうつ病であると診断できます。これらはうつ病の症状ですね」

「う、うつ・・・?」

「はい。そんなに珍しい病気ではあません。身近なストレスで誰だってかかる可能性のある病気なんですよ」

ネムは頭が混乱した。

うつ病ー私が、うつ病ー

「なので、あなたが頭がおかしいとか、そんなことはありませんので安心して下さい。うつ病は治りますから」

すると母がすかさず突っ込んだ。

「あの、先生・・・。うつ病は精神病でしょうか・・・?まさか、うちの子が精神病だなんてご近所に知られたら、もう」

「お母さん、安心して下さい。確かにうつ病は精神疾患の部類に入りますが、治療すれば治ります。」

「そうですか・・・」

ネムは母に絶望した。

母が私をこんな風に思っていたのかと思うと、吐き気がした。

「では、とりあえずゆっくり休んで療養しましょう」