手にしたものと失ったものと

しゅっしゅっ、と、鉛筆を画用紙に滑らせる音が教室に響く。
僕も、僕なり一応一生懸命、目の前の柏木さんを画用紙に書き写していく。
とはいえ……。
じょ、女子の顔を見つめるのは恥ずかしい!
はっきり言って、面と向かって見つめる機会なんてなかったもんな。
僕は、ちらちらと盗み見るように柏木さんを見る。
なんかこう……盗撮魔になった気分だな。
彼女の顔は……可愛いのかどうか、よくわからない。
どちらかといえば地味なタイプだ。
髪の毛は染めていない黒で、さほど長く伸ばしているわけでもなく、耳を隠すぐらいのボリューム。
目鼻立ちは結構整っていて、目は少し細い。
唇は、たぶんごく普通。
厚くもなく、薄くもない感じ。
そんなごく普通なパーツが集まっているわけだから、何度かチラチラ見ても、画用紙に描きとめようとすると、すぐに印象が霧散してしまう。
それなりに描いてみても、似ているのかどうかよくわからない。
僕がそんなことに頭を悩ませていると、唐突に彼女が声をかけてきた。

「ねぇ、高野君」
「な、なに?」
「もう少し顔を上げてくれないと、うまく描けないよ」
「ご、ごめん……」

僕はもじもじと顔を少し上げた。
それと同時に、左側の前髪をぐいぐいと指で下へ引っ張る。

「??」

僕のそんな動作を、柏木さんが不思議そうに見ていた。