バスから降りたのを、見ていたかのように
電話が震えた。

急いで出ようとしたのに、カバンの中で
電話が逃げて。
やっと、捕まえて出ると。

ちづる!と、大きな声がした。

体が…その声に応えるかのように…
しびれた。

すぅっと息を吸って、呼吸を整えて。

先輩…。着いたの?と、答えると。

ちづる?…よかった…。
なかなか出ないから…。
…大丈夫?ちゃんと帰れた?
今どこ?ちづる?

心配でたまらないって、先輩の心が
じわっと染み込む…。

はい。今、バス降りたとこだよ。
なんとか、大丈夫。

え?まだ寮ついてないの?
どうした?なんかあった?
本当に大丈夫?

あんな風に見送ってしまったせいで…
先輩がなかなか安心してくれない。

ごめんね…。心配させて。
あたし…自分でも、どうしようもなくって…。
でも、助けてくれた人がいたの。
ちゃんと帰ってこれたよ。
だから、大丈夫だよ。

俺…なんにも出来なくてごめんな…。
あんな…ちづる残してさ。
飛行機ん中で、心配で心配で…。
吐きそうだったよ…。

うん…ほんとごめん。
ありがと…心配してくれて。

いや…。
でも、声聞いて、少し安心した…。

ちづる!あのさ、
東京なんて、飛行機ですぐだよ。
距離なんて、たいしたことない。
俺、今…本当にそう思ってるよ。

先輩…。あたしも、東京行く!

え??どうゆうこと?

焦ってる先輩が可愛い…。

春休みに。絶対行く。決めたから。
空港で、助けてくれた人も言ってた。
東京なんて、一時間半ですよ?って。
…あたし、バイト頑張る。


そっか…。来てくれるの?
そっか…。
じゃあ楽しみに待ってるよ!

うん!

あのさ、ちづる?

ん?

助けてくれた人って…男じゃないだろね?