しばらく、その場を離れられなかった。
悲しくて…苦しくて…。
歩けなくて、しゃがみこんでしまっていた。

ふと、肩に触れる手。

大丈夫ですか?と、声がした。

見上げると、ゲートにいた女性だった。

返事が出来ずにいると…。

ずっと、気にかけていらっしゃいましたよ。
つらいお見送りだったんですね…。
と、背中をなでながら話す。

何度も何度も振り返る先輩の姿…。

また思い出し、
子供のようにしゃくり上げ…
涙が止まらなくなる…。

あ、すみません…!
思い出させて…しまいましたよね…。

イスまでお連れしますか?

声も出せないでいるあたしを…
支えながら、連れて行ってくれた。

少し落ち着くまで、ここで。
今、お水をお持ちしますから。

戻ってきたその人に、お水をいただき。
なんとか…しゃべれるくらいに
落ち着くまで、
しばらくかかったが…
その人は、ずっと付き添ってくれていた。

お仕事…あるのに…すみませんでした…。
ありがとう…ございます…。

いえ、私は丁度休憩の時間だったので。
大丈夫ですよ。と、笑っていた。

何かの縁か、お二人のお見送りに
居合わせた身として、ほっておく気には
なれませんでした。
飛行機乗られた方が…ひどく心配して
ましたし…。
私も…心配になってしまって…。


…すみ…ません。ご迷惑を…おかけして…。

いいんですよ。よかったです。
少し落ち着かれて。
と、微笑んでくれた。

お帰りは、バスですか?

行き先を聞いて、バスの時間を調べてくれる。

…あ、行ったばかりですね…。
あと30分後です。

そうですか…ありがとうございます…と
言うあたしに。

ニコッと笑って。
少し落ち着いたようなので、よかったら
お茶でも付き合っていただけますか?と、
席を立った。

え?
でも…?

戸惑うあたしに…
どうせなら、バスまで
お見送りしたくなりました。
あ、でも、ご迷惑でしょうか…。と、笑った。