待ち合わせ場所はカフェだったので、
先に入って待っていた。

まだ2時半か…。と、先に飲み物を頼んで
外を見てたら。
駐車場に先輩の車が入ってきた。

え?もう来たの?と、ビックリしてると。

入ってきた先輩も、あたしを見つけて
ちょっとビックリした顔をして、
向かい側に座った。

早いねーちづる。待てなかったの?と、
笑う。

先輩こそ、早いよ。待てなかったの?と、
真似すると。

まあねー。と、照れ笑いする。

あら、今日は素直ですね。と、からかうと。

いつもですけどー。と、笑う。

たわいもない話も、目の前に先輩が
いるだけで楽しい…。

あー喉乾いたー。と、テーブルのアイスティを
ゴクゴク飲む先輩。

あ、それ、あたしのー!と、言うと。

ちづるのものは、俺のもの。と、いばってる。

もう!
…あ、思い出した…。

先輩!あたし、今日お風呂で鏡見て、
ビックリしたんだから!と、小声で
抗議すると。

え?ってキョトンとする。

鎖骨あたりを指さして、
こことか、あちこちに…。

もっと小さな声で言うあたしに。

ああ…。と、照れ笑いしながら、

だって、ちづるは、俺のものでしょ。
取られないように、印つけといたんだー。
なんて言うから。

え。そんなこと言われたら…
怒れない…。

赤くなるあたしに、笑いながら

ごめんね。今度は目立たないとこにするね。
と、ずるい顔をする。

もう…。ほんとにずるいんだから。

今日のサヨナラを、悲しくさせないように
してるんだね。
いつもより、先輩はずっとおしゃべりだ。

しばらくして、時計を見て…。

ちづる。もうそろそろ行くよ。と、言う。

心臓が痛い。ドキドキする…。

外に出て。
送ってく。乗って。と、言われたけど。

いい。一人で帰れる。遅くなるよ?
そういうあたしを、じっと見つめ。

わかった。じゃあ行くね。と、車に
乗り込んだ。

少し黙った後、
ちづる…浮気すんなよー。と、最後まで
ふざける。

もう!ばか。
…印、消えないうちに会いにきてね。

あたしを見つめる目が、優しくなる。

またね。今度はクリスマスに。
電話するよ。

窓から手を出す先輩。
ぎゅっと握る。いつものあったかい手。

待ってる。あたしも電話する。

じゃあ。と、微笑んでから、車が出ていった。

手のぬくもりが、痛い…。

泣きたくない…。
あたしたちは、別れるんじゃない…。
サヨナラなんかじゃないんだから。