全く、全然、本当に気がつかなかった。

先輩が、あたしを見てた?

プレゼントあげる前から?

え、ってことは。
もしかして、両想いだったの??
そんなまさか…。だって…。

ここに来てから、先輩はあたしをあまり
見ない。

先輩…。
じゃあ、どうして…。
何も言ってくれなかったんですか?
あたし、てっきり…。

そう。あたしは、拒否されたんだと
思っていたから。
苦しくて。悲しくて…。
諦めなきゃいけないと、ずっと思っていた。


ごめん…。

先輩が、静かにあたしを見つめている。

俺さ、ずっとやりたい仕事があってね。
去年からあちこち、走り回って。
なんとか希望の会社に就職できたんだ…。

え、それは良かったじゃないですか!
おめでとうございます!


うん…。ありがとう。
ただね。
たぶん俺…。
東京勤務になると思うんだ。

え……。
ふと、固まるあたしに。

大学も、ほとんど授業も無いし。
ここも引き払って、一度実家に帰ることに
なってる。

あたしは、先輩が話した言葉を
放心しながら繰り返していた。

東京…?
実家に帰る?

東京、もう、決まってるんですか!?
いつ、ここからいなくなるんですか!?

先輩が…いなくなる…?

ふいに、頬に感じた。
先輩の手。

あたし、泣いていたんだ…。