白い髪に緑の目、人間離れしたその容姿は人の目を奪った。

1000年に一度、月が緑色に輝く夜に緑の目をして生まれてきた子供はとてつもない魔力を秘めて生まれるという。
魔力を秘めて生まれてきた子は、代々王族となり国を治めた。その魔力を秘めて生まれた王のことを民は『1,000年王』と呼ぶようになった。
そしてまた1000年後…天才が生まれる夜が来る。

チル:「あーーーー、やっぱり今日もここにいる!おばさんが早く帰って来いってさ〜」
ジル:「もー、うるさいぞチル。大体なんでここにいるってわかったんだよ!」
チル:「だっていっつもここで魔法ごっこしてるじゃん!」
ジル:「……」
私は、1000年に1人の天才らしい。
生まれて物心ついた時にはもう、国からの監視を受けてこの村で生活をしていた。
1週間に一度国の教育係がここに来て、3時間ほど私に礼儀作法のなどを教えにやってくる以外は普通の女の子と一緒…だと思う。
16になったら王族として認められ正式に8人目の『1,000年王』となり、国を治めるらしい。
幼馴染のジルは、私が魔法を使えるのが羨ましいらしく、私にいつもケンカを売ってくる。
ジル:「チル!今日こそはお前をギャフンと言わせてやる!どこからでもかかって来い!」
チル:「へー、負けて泣きべそかかないでよね!」
前に教育係の人が言っていたけど、私の魔法はかなり自己流らしく、先代の王より魔力が強いと。
やりたいことを頭に思い浮かべて、体を少し動かせばなんだってできる。
チルは手を前に出した。
次の瞬間、ジルは何かに投げ飛ばされたように吹き飛んだ。
ジル:「うわぁーーーー!」
チル:「これで私の22勝ね!」
ジル:「いてててて…お前本当に俺と同い年かよ!」
チル:「同い年だよ。ジルと同じ6歳です。」
少し自慢げに、倒れているジルを見下す。
ジル:「チッ…今日のところは帰るか。」
そう言ってジルと私は、丘を下りた先にある小さな村に帰った。
ジル:「次は絶対勝つからな!逃げんなよ!」
チル:「絶対負けないから!」
丘を下りた先を右に曲がったところでは密集して子供達が遊んでいる。私はバケモノ扱いされるため、ジル以外の子とは遊んだことがない。
みんなで楽しそうに遊ぶ姿を見て、たまに…そこしだけ羨ましいと思う。
近所の子A:「やーい。白髮のバケモンやーい笑」
近所の子B:「雑草色のその目はどーしたんだーい?」
チル:「またあんたたち?またボコボコにされたいの?」
いつものことだ。慣れてはいるが、全く傷つかないわけじゃない。
ジル:「おい!何が雑草色だ!お前らそれ、ただのヤキモチだろ!?」
近所の子B:「ヤベー、ジルだ。逃げるぞ〜!」
ジル:「あいつらいくらやっても飽きやしねーな。チル、大丈夫か?」
ジルはすごく優しい。いつも私を守ってくれる。
チル:「大丈夫。ありがとう」
ジル:「バ、バカ、い、いつものことだろ?」
ジルはいつも照れ隠しする。それを見ているとつい笑ってしまう。
ジル:「何ニヤニヤしてんだよ」
チル:「別に〜笑」
ジル:「なんだよ。言えよ!気になるだろう〜!」
白い髪に夕暮れ色が吸い込まれたように、チルの髪が夕暮れ色に染まる。
まだ小さなその天才少女はこれから美しく成長していく。