隼人さんと僕を乗せたバイクは、
小綺麗そうなビルの前で停まる。
「こっち。」
駐輪場でヘルメットを返すと、
隼人さんの後ろをついていくようにビルの中へと入っていった。
「今日はメンバーが集まって今度のライブのリハやるんだけど、
カスミが自分で設けた新曲の作詞期限も今日なんだ。」
「は、はぁ。」
「でも俺の予想だと多分カスミは出来てない。
だから今日はメンバーにドッキリを仕掛ける。」
階段を上りながら隼人さんはどこかウキウキしている様子だった。
「・・・ってちょ、ちょっと待って下さい。
Cyclonの皆さんが集まるって・・・。
そんな所に僕がいたら場違いじゃないですか!」
「安心しろって悪いようにはしねーから。
ほれ、よこせ。」
隼人さんは僕の方を振り返ると、
右手を出した。
「お前が書いてきた詞、見せてみ。」
「・・・・・・・。」
黙ってノートから切り離した1枚の紙を渡す。
隼人さんはそれをチラ見すると、
折り畳んで上着のポケットにしまった。



