“ガチャリ” スタジオに入ると、 昨日の敬介さんと同じように、 志郎さんは黒い四角い大きな機材を黙々といじりながら準備を始める。 「きょ、今日は敬介さんが一番ノリじゃないんですね。」 ずっと続く沈黙に耐えきれずつい声を出してしまう。 「今日はバイトで遅れてくる。」 「そ、そうですか。」 「和也。」 「は、はい。」 「昨日から急ピッチで作ってる曲。 昨夜のリハが終わった後、 本郷先輩から俺達に注文が入った。 “黒い曲に仕上げろ” お前の詞もそれに合わせるように。」