緩やかな坂を登りきると、アーチ型の校門が現れた。
ビルに囲まれながらも緑豊かな敷地に建つ校舎には立派な鐘塔がある。
門の前で立ち止まり、みちかはその鐘塔を祈るような気持ちで見上げた。
今日はルツ女の出願日だ。
次々とルツ女の校門をくぐって行く濃紺の服に身を包んだ母親たち。
みちかも彼女達に続いて校舎へ向かいゆっくりと歩いた。
やがて、昇降口前の小さな列にたどり着く。
その来客用の入り口の左側に、学園の事務局があり、出願はそこで行われていた。

5分ほど待って順番が来た。
「おはようございます。」と、感じの良い笑顔の職員がみちかを迎える。
みちかも丁寧に挨拶をして、両手で願書を差し出した。

「よろしくお願い致します。」

「確認致しますので、少々お待ちくださいね。」

願書の文字を1字1字指で辿るように確認をすると、職員は、1枚の紙をみちかの前に置いた。
そこには20分間隔で面接時間が記載されていた。
職員は、その真ん中の辺りに赤いペンで印を付ける。

「友利乃亜さん、面接は9月16日の10時30分です。」

みちかは用紙を受け取り、もう一度深々とお辞儀をする。

「どうぞ宜しくお願い致します。」

紺色のサブバックに用紙を大切に仕舞う。
後ろに控えていた保護者にも一礼して、みちかは昇降口を出た。

滑らかなカーブを描くように、木々に囲まれている校門へ続く道を歩きながらみちかは強く思った。

絶対に受かるんだ。
桜が咲く来年の春、乃亜とこの道を歩くんだ、と。