全ての内容を終えると親たちは子どもの居る教室へと呼ばれた。
そして自分の子どもが解いたペーパーのプリントが、それぞれ手元に配られた。

「それでは、本日の内容を順に解説して参ります。」

南野が、親たちの前に立ち、ハスキーな声で言った。
子どもたちは前方のテーブルで、お題に沿ったお絵描きを静かに行なっている。

みちかはボールペンを握りしめて、南野の言葉を聞き漏らさないよう真剣に耳を傾ける。

「まずは図形の問題からですね。」と、南野はいくつもの図形が並ぶ1番目の問題の解説を始めた。

「どれとどれを組み合わせれば、この形が出来上がるでしょうか、という問題ですね。図形の問題はルツ女は必ず毎年出ます。ご家庭でタングラムなど用いて対策されているとは思いますが、非常に複雑なものも出題されますので今一度ご確認お願い致しますね。では次です。」

乃亜の解答は4問中3問正解で、最後のやや複雑な形の組み合わせが分からなかったようだった。
タングラムでのパズル遊びはよくやってはいたが、もう少し難しい物にも挑戦しておかなくてはとみちかは思い、赤字でタングラム、とプリントに書き込んだ。

「数量の問題ですね。上の四角の中にネコとウサギとリスがいます。ネコとリス合わせると何匹いますか。その数だけ丸を書きましょう、という問題です。こちらはもう大丈夫ですね。数え間違いのないように。お次は、ウサギがあと何匹やってくればリスと同じ数になりますか。その数だけ丸を書きましょうという問題です。ここではまず、ウサギとリスそれぞれの数を数えて比べる事からやらなくてはいけません。ご存知とは思いますが…。」

そう言って、南野が数の把握の仕方を足早に説明した。
乃亜は、この問題は解けてはいたけれど南野が言うにはこれはまだ簡単で、明日はもっと複雑な数量の問題を出すので復習をしてください、との事だった。

「次の問題です。」

そう言って南野はどんどん解説を進めていく。
公園で遊ぶ子供たちの絵の中で、してはいけない事をしている子供を探して丸をつける常識の問題、色々な果物が載っているシーソーを見て、どの果物が一番重たいかを考える重さ比べの問題、点つなぎ、迷路、など。

南野は、年長のこの時期には既にある程度まで対策が仕上がっている事を前提として解説を進めている様子だった。
ずっと自宅だけで対策をしてきたこともあって、乃亜は、得意な分野と苦手な分野の差が大きいようだった。
丸とバツが半々くらいの結果となっていて、南野がつけた、勢いのあるバツの赤字の多さにみちかは密かに焦りを覚えた。