コンコンッ───
暫し魔法に掛かった自分を眺めていたとき、鼓膜に伝ったのは控え室の扉をノックする音。
「朱里、入るよ?」
「うん」
そして、大好きなたっくんの声。
ガチャッ───
「う、わぁ…」
真っ白なタキシードを纏ったたっくんが控え室に入ってくると、あまりのかっこよさに思わずそんな声が出て、見とれてしまった。
顔が熱くなるのを感じながらも、素敵すぎる新郎から目が離せない私に何故かたっくんは困り顔。
「朱里…どうしよう」
「え…?どうしたの?」
「やっぱり今日の結婚式は中止にしよう」
「へっ…!?な、なんでいきなり?」
「だってこんなに可愛い花嫁さん見たら、みんな朱里のこと好きになっちゃう」
「有り得ないからっ」
やっぱりたっくんの心配症は一生直らないみたい。
そんなたっくんに苦笑いを浮かべながらも、私は今誰よりも幸せを感じてる。


