いい大人が二人して公園でケーキを見ながらひたすら泣いている。
それがなんだか可笑しくて、気付けば二人揃って泣きながら笑ってた。
「ハハ…諒介さんのケーキでこんなに泣いたなんて知られたら死ぬまで弄り倒されるな」
「フフッ…でも先輩が作るケーキってすごく素敵だよね。ウェディングケーキも先輩にお願いしようか?」
「ウェディングケーキの前に…プロポーズの返事、まだ聞いてないんだけど」
「え?」
たっくんは、頬を濡らしていた涙をゴシゴシ拭う。そして、私の手を取るとニコッと微笑んだ。
「俺が昔言ったこと…覚えてる?」
「え?なに?」
「朝目が覚めたとき朱里が隣にいて、疲れて帰ったときも朱里がそばにいてくれる。俺はそれだけで頑張れる…ってやつ」
「あ…うん、覚えてるよ」
あれはたしか、たっくんが高校卒業したら一緒に暮らそうって言ってくれたときだ。
あの日は熱を出してたから途切れ途切れにしか記憶がないけれど、その言葉はよく覚えてる。
それくらい…嬉しかったから。


