髪の毛のセットとメイクを終え、美容院を後にした私が向かったのは先輩の勤務先。

ホテルのロビーで待つ私に気付いた先輩は、大きく目を見開いていた。




「どこの美女かと思ったら…気合い入ってるじゃん」

「今日は大切な日ですから」

「そんな大切な日に花を添えられるケーキに仕上がってるよ。ほら」




白い箱を開け、先輩が取り出してくれたケーキ。

それを見た私は…鳥肌が立った。




「すごい…すごすぎます!イメージピッタリです」

「でしょ?俺の力作だから」

「こんなに素敵なケーキ作ってもらえるなんて…」




想像以上のケーキの完成度に、目頭がジワッと熱くなった。

そんな私を見て、先輩は優しく笑う。




「小春のためだけに始めたこの仕事が、今では俺の誇りなんだ。こうやって人の幸せに携わることができるから」

「とっても素敵な仕事ですね。私も先輩の作るスイーツにいつも幸せをもらってます」

「ありがと。俺、芹沢のことは大嫌いだけど、朱里ちゃんのことは応援してるから…頑張ってこい」




トンッと私の背中を押すこの人が、ずっと苦手だった。

でも…たっくんと同じように優しくて、真っ直ぐで、一生懸命生きてる先輩を今は尊敬してる。




「じゃ、俺は仕事に戻るから。またね、朱里ちゃん」

「先輩、本当にありがとうございました」





手を振る先輩に一礼してホテルを後にした。

次に私が向かうのは…愛する人のところ。