そして、迎えたたっくんの誕生日の日。
仕事が終わった私が向かったのは、駅前の美容院だった。
実は、ユメちゃんは美容師さんになって、ここの美容院で働いてるんだ。
「拓海くんの誕生日だからってそんなにオシャレしてるの?長いこと一緒に住んでるのに相変わらずバカップルだねぇ」
「そうかな?少しでも可愛いと思ってほしくて…」
「そんなことしなくても朱里のそういうとこが拓海くんのツボだってこと、何で分かんないかなぁ。いくつになっても鈍いんだから」
ブツブツ小言を言いながらも、ユメちゃんは私の髪を器用に巻いていく。
普段髪を巻いたりしないから鏡に映る自分がすごく新鮮に思えた。
「ユメちゃん、メイクもしてもらっていいかな?少しでも大人っぽく見えるようにしたいの」
「了解。でもそんなに可愛いワンピまで着てどしたの?高級レストランでディナーでもするの?」
「ううん、実家に帰るだけなんだけどね。でも…今日はとびっきり可愛くしてほしいんだ」
「ふーん…よく分かんないけど、拓海くん泣いて喜びそうだね」
「フフッ、そうだといいな」
ユメちゃんが慣れた手付きでメイクを施してくれると、鏡に映る私からは幼さが取れ、年相応の大人に見えた。
これなら…胸を張ってたっくんに伝えられる。


