「さすが、たっくんはしっかりしてるなぁ」
「本当よねぇ。仕送りなしで自分で生活するなんて、私達が若い頃には考えたこともなかったわよ」
たっくんがバイトを始めたのは、家を出て一人暮らしをするため…?
たっくんの行動が全て私に繋がってるなんて、ただの自惚れだったんだ。
私が離れたくないとか、寂しいとか。
そんな子供じみたこと考えてる間にも、たっくんは色んなこと考えて必死に頑張ってて…
そうやってどんどん大人になっていくたっくんに…
私はいつまでたっても追い付けない。
「それでさ、二人に大事な話があるんだけど…」
それ以上なにも聞きたくなくて咄嗟に耳を塞ぐと、同時にグラッと反転した視界。
重かったはずの体はフワッと浮いたみたいに軽くなって。
その次に感じたのは、固くて冷たい床の感触と…
「…朱里!」
…私を呼ぶ、たっくんの声だった。


