「仕事がハードだから休みの日はいつもグッタリで全然実家も行ってなくてさ、今日かなり久々に会った。まぁ会ったって言っても、実家で妹と遊んでただけなんだけど」
「へぇ、そうなんだ」
「それで俺が作ったケーキ渡したら瞬殺で食ってた。『すごーい、美味しーい、諒ちゃん天才~』ってベタ褒めされて…あんなに小春に褒められたの、中学のテストで100点とったとき以来かも」
そういえば河原で泣いてた俺にその満点のテストの答案用紙で涙拭けとかよく分かんないこと言ってたっけ。
本当、昔から変な人だったよな。
それで…昔から本当に真っ直ぐで一途な人なんだ。
「それで小春ちゃんとはどうなったの?」
「あ?あー…」
俺の問いに、諒介さんは考えるように少し間を空けて。頬をポリポリ掻きながらゆっくり口を開いた。
「押し倒したらキレて思いっきり腹蹴りやがった。あいつ…昔から凶暴なんだよな」
「うわ、やらかしちゃったね」
「しょうがないだろ。あんなに美味そうに食われたらさ、あー、俺この顔が見たかったんだって嬉しくなっちゃって抑えきれなかったんだから」
「まぁ…俺も男だからそれは分かるけど」
「しかも俺、何年も禁欲してんだぞ?好きな女が目の前にいて我慢できるかよ」
それは俺もよく知ってる。
朱里と一緒にいるときは、なんとか理性を保とうといつも必死になってるけど…
その理性がふとしたキッカケで飛んでしまったとき、どうやったって止めることはできないんだ。


