「前にさ、『離れてる間に育む愛もある』って言われたことがあって。でも、俺には無理だと思った。朱里と離れたら…多分、俺は死ぬ」
こんなこと他の人に言ったら馬鹿にされると思う。
死ぬなんて大袈裟、離れるって言っても大学が違うだけじゃんって、そうやって笑い飛ばされるんだろう。
でも実際、大学に行ってバイトもして…そういう生活をしていれば、確実に会えない時間の方が増えるわけで。
普通の人には大したことないかもしれないけど、俺にとっては大問題でかなり深刻。
物心ついた頃から朱里は俺の隣で笑ってた。
幼稚園も、小学校も、中学校も、高校も全部一緒で目を凝らせばどこにいたって朱里を見つけることができたのに。
高校卒業したら、もうそんな生活ができないなんて耐えられないと思った。
だったら、いっそ……
そう思って、受験前のこのタイミングでバイトをすることに決めたんだ。
「何年も想い続けてやっと手に入れたんだろ?だったら離れる必要なんてないじゃん」
「…うん」
「ウザイほど一緒にいろよ。で、おまえはそうやって自分らしく愛を育めばいい」
諒介さんは俺を笑ったりしないし、馬鹿にもしない。
それどころか、俺の気持ちを分かってくれるんだ。
いや…もしかしたら諒介さんにしか分からないのかもしれない。
同じように、死ぬほど一人の人を愛し続ける諒介さんにしか。


