「僕、昔から月や星は好きだけど太陽だけは苦手でした」

「え?どうして?」



唐突にそんな話をし始めたマサトくんに少し戸惑いながらも尋ねてみると、その表情は途端に曇る。



「正しくは苦手になった、かもしれません。学校に行かなくなってからは朝、太陽の光で目が覚めるのが苦痛でしょうがなかったんです」




ポツリ、ポツリと記憶を辿るように、マサトくんはそのまま続ける。




「太陽はいつも明るくて、眩しくて…僕はそれを避けるようにカーテンを閉めていました。明るい世界は怖かったんです。自分の存在を証明するみたいで」



それを聞いて、今の明るいマサトくんに戻るまで一体どれだけの時間を要したのだろう、と思った。

きっとたくさん苦しんで、苦しんで、苦しみ抜いて。

呑気に生きてきた私には絶対分かり得ないような世界でマサトくんは生きてきたんだ。




「佐伯先輩に初めて会ったあの日、思ったんです。明るくて温かくて周りの人を元気にする力を持ってる太陽みたいな人だって」

「太陽…?私が…?」

「佐伯先輩といると心が温かくなります。元気にもなれます。だから…今の僕は明るい世界で笑うことができるんです」



マサトくんはニコッと笑ってくれてるのに…

私は、溢れる涙を止めることができなかった。