さてと。これで一通りみんなに配り終わったし…
あとは今、焼き係をしてくれてるたっくんだけだ。
「たっくん、焼き終わったら一緒に食べようね」
すぐそばで声を掛けたのに返事をすることなく、たっくんはトングを持つ手を止めたまま珍しくボーッとしてる。
どうしたのかな…考え事?
「たっくん、引っくり返さないと焦げちゃうよ?」
「え?ああ、うん」
止めていた手を動かし始めてからのたっくんは、いつもと変わらない振る舞いで…
元気がないように見えたのは、気のせいだったのかも。なんて、呑気な私は思ってしまっていた。
「朱里も少しは食べなよ。はい、焼き立て取っといたよ」
「ありがとう…って思いっきりピーマンあるけど?」
「あれ?高校生だから何でも食べるって前言ってなかったっけ?」
「うっ…食べます…」
たっくんは私が思ってるよりずっとずっと大人で、
内に秘めてるものは大きくて。
いつだって…誰かの背中を押して、
誰かのために頑張っちゃう人なんだ。


