マサトと朱里が二人でいるのを見たあの日。
久しぶりにマサトから交換ノートを渡されたのは、その次の日のことだった。
“拓海くんごめん…僕、佐伯先輩のことが好きなんだ”
きっと口では言いにくかったからノートに書いたんだろうけど…
マサトから言ってくるとは思わなかったから、かなり驚いた。
もちろん応援なんてできるわけない、嬉しくもない。
だけど、怒りや不信感があるわけでもなく…すごく不思議な気持ちだった。
その日から、またマサトとの交換ノートが始まったんだ。
“朱里が明日、リュウジやユメちゃんも交えてみんなで一緒にお昼食べようって言ってたよ”
“そっか。賑やかで楽しそう。佐伯先輩、僕がいつも昼に一人でいるのを心配してくれてるみたい”
“授業中、窓の外を見たら佐伯先輩が体育でリレーをしてた。転んだクラスメイトの女子に手を差し伸べてたよ。優しいなって思ってたら今度は佐伯先輩が転んでてちょっと笑った”
“朱里は誰にでも優しいよ。それで昔からかなりのおっちょこちょい”
“なかなかクラスに馴染めなくて焦る僕に、何度も「大丈夫だよ、絶対マサトくんの良さを見ててくれる人がいるはず。焦らず、ゆっくりね」笑ってそう言ってくれた佐伯先輩に今日も救われた”
“焦ることないよ。そのままのマサトなら友達たくさんできるはず”
朱里に恋するマサトと、朱里の彼氏の俺。
メールでも電話でもなく直接語り合うわけでもない。
はたから見れば奇妙すぎるだろうけど…
俺とマサトはこんなやり取りを3ヶ月続けたんだ。


