「ごめんね。お風呂に入るなんて嘘なんだ」
鼓膜を揺らすたっくんの声。それと共に目に飛び込んできたのは、たくさんの真っ赤なバラとその周りを囲む可愛らしいかすみ草だった。
心を奪われるほど美しいそれはーーー所謂“大きな花束”で、私の部屋の前でそれを抱えているたっくんは少し照れくさそうな表情だった。
「これ…誕生日プレゼント」
「うわぁ…」
差し出されたその花束は、私が持つと体が半分隠れてしまうほどの大きさだった。
「これね、17本あるんだ」
「あ…年の数…すごい……」
何がすごいのか自分でも分からないけれど、胸がいっぱいでこんなことしか言えなかった。
それくらい、嬉しくて嬉しくて。
「誕生日おめでとう。朱里が生まれてきてくれて、俺はすっごく幸せだよ」
「あ、ありが…」
ギュッと抱えた素敵なプレゼントと、たっくんからの言葉。そのどちらにも胸がジーンとしてしまい、お礼を言い終わる前に泣いてしまった
たっくんが急に出掛けたのは、このお花を買いに行くためだったんだ。
こんな大きな花束抱えたまま家まで帰るの絶対恥ずかしかったはずなのに。
それでもたっくんは私のために…
そう考えると涙が溢れて止まらなかった。


